こんにちは
立川駅南口より徒歩5分
立川デンタルクリニックすずき 院長の鈴木です。
このブログでは、基本的に、皆さんの口の中の悩み、歯の健康維持に対して少しでもお役に立てば良いとの想いから、様々な情報発信を行っておりました。
その中で、出来るだけ書かないでおこうと決めていたジャンルがあります。
それが、制度に対する問題提起です。
国民皆保険制度、歯科の保険制度、様々な問題点があります。
しかし、そこは僕らが何か言っても始まらないし、ただの言い訳になってしまう。
保険のルールだから仕方ない。
そう言えば誰も何も言い返せなくなってしまう。
それが本当に嫌なら、保険治療を一切行わない歯科医院にすればいいだけなので、制度についての問題提起はほとんど発信しておりませんでした。
これからも、ほぼしないと思います。
しかし、この問題は歯科界の未来、根源を覆してしまうような問題なので、あえて書かせていただきます。
技工士専門学校がどんどんと閉校しているというのです。
2000年頃に比べて、20校減少しました。
2000年の専門学校数が72校だったので、1/4減少したことになります。
その理由は、入学志望者が減少したため…
なぜ、技工士はそんなに人気のない職業になってしまったのか?
それは、・低賃金・長時間労働・高い離職率による人手不足
負のスパイラルに突入しているからです。
国家資格である技工士の賃金を上げることが出来れば、問題が解決できそうですが、それも、そう簡単には解決できなさそうなのです。
例えば、インレーと呼ばれる、部分的な金属があります。
こんな感じのやつです。
これを一つ作るのに、新卒の技工士がどの位時間がかかるか?というのを調べた団体が二つありました。
その二つの団体の平均時間は117分でした。
この時間を東京都の最低賃金に合わせると、1970円の人件費がかかります。
事業主の方はお分かりかと思いますが、人件費割合というものがあります。業種によって様々だと思いますが、やや高めで仮に40%だとしましょう。
そうすると、インレー1個で最低でも4925円の売り上げがないと、その技工所は仕事を請け負えば請け負うほど赤字になってしまう価格。ということです。
しかし、厚生労働省が定める、技工料インレー1個1990円
1990円ですよ?
国家資格を持った人が、東京都の最低賃金で、資格手当もなく働いたとして、技工所に5千円弱入らないと事業が成り立たないという仕事の、推奨価格が1990円
それはボランティアですか?
人件費、最低賃金を決めているのは厚生労働省
保険点数、治療費を決めているのも厚生労働省
歯科技工士に免許を交付し管轄しているのも厚生労働省です。
そもそも、インレーは既製品ではありません。
その人の歯型を取り、その人たった一人の為に作る金属です。
サイズや必要な時間が異なるので、単純に比較できない事は分かっています。
しかし、オーダースーツ、最近非常に安くなってきたとはいえ、5万円以上するところが多いでしょう。
生地などにこだわれば、10万円20万円は当たり前の世界です。
足の型を取り、オーダーで靴を作成すると…
やはり6万円~20万円
オーダーの結婚指輪
指輪の作成料は3万円ほど、そこに材料費や加工代が入るそうです。
ではインレーは?
保険点数608点(金属を多く使う大臼歯)
つまり6080円です。
僕たち歯科医師は別にいいです。
調整だってそんなに大変じゃない。
儲けがほとんどないのは、今に始まったことじゃないので。
しかし、この金額設定で生計を立てなくてはいけない、技工士さんには無理があるんじゃないですかね?
そうやって、技工士という職業が人気がなくなるとどうなるか?
若い技工士さんがいなくなります。
今は機械で詰め物を作れる時代だ!という人もいるかもしれません。
その機械の操作は誰がしますか?誰が作っても同じような物が出来る機械ではないんですよ?
精度や設計はやはり、歯の事を分かっている人でないと作ることが出来ません。
そして、残念ながら、今の技術では入れ歯は作れません。
入れ歯のようなものは作ることが出来ると思いますが、咬み合わせってそんな単純なものではありません。
技工士さんにしわ寄せがいっている。非常に大きな負担を強いている今の現状を打破しないと、あと15年経って、かぶせ物作れる人がいないから、技工物の納期は1か月後…
そんな時代が来るかもしれないんですよ?
自分たちの立場からだけではなく、相手の立場に立って物事を見ないと、いずれそれは自分に返ってきてしまうような気がします。
少しでも、このような現状を知っていただけたらと思います。